ハウスホルダー変換:Pythonで学ぶ直交化技法

数値計算において、直交化は非常に重要な役割を果たします。特に、ハウスホルダー変換は、行列を直交化するための強力な手段として知られています。この記事では、Pythonを使ってハウスホルダー変換の基本的な概念とその実装方法を解説します。

目次

  1. はじめに
  2. 直交化とは
  3. ハウスホルダー変換とは
  4. Pythonでのハウスホルダー変換の実装
  5. コード例
  6. まとめ

1. はじめに

この記事では、Pythonを使用して行列の直交化手法である「ハウスホルダー変換」について解説します。

2. 直交化とは

直交化(Orthogonalization)とは、一連の非ゼロなn次元空間内のvectorsが互いに正規直行するようにするプロセスです。これら正規直行したvectorsから成る集合(基底)が得られます。

3. ハウスホルダー変換とは

「Householder transformation」または「Householder reflection」とも呼ばれるこの方法は、Alston Scott Householder氏が考案した行列理論上の反射法です。任意サイズの正方形行列Aを上三角形式へ反映させるため使用されます。

4.PythonでのHouseholder transformation の実装

以下では具体的な手順やコード例を通じて解説します:

  1. 必要なライブラリ(numpy) をインポートします。
  2. ベクトルからHouseholder 行列を計算する関数house を作成します。
  3. 行列A を上三角形式へ反映させる関数qr_decomp を作成します。

5. コード例

以下は、Pythonを使用してハウスホルダー変換を実装する簡単な例です。

import numpy as np

def house(x):
    """Compute Householder reflection."""
    v = x / (x[0] + np.copysign(np.linalg.norm(x), x[0]))
    v[0] = 1
    H = np.eye(x.shape[0])
    H -= (2 / np.dot(v, v)) * np.outer(v, v)
    return H

def qr_decomp(A):
    """Perform QR decomposition using Householder transformation."""
    m, n = A.shape
    R = A.copy()
    Q = np.eye(m)

    for j in range(0, n):
        # Apply Householder transformation.
        Hj = np.eye(m)
        Hj[j:, j:] = house(R[j:, j])
        Q @= Hj.T
        R @= Hj

   return Q, R
   
# Test the function with a random matrix.
np.random.seed(123)
A = np.random.rand(5, 3)
Q, R = qr_decomp(A)

print("Q:")
print(Q)

print("\nR:")
print(R)

print("\nCheck QR=A:")
print(Q @ R - A) # Should be close to zero matrix.

このコードでは、まずhouse関数でHouseholder行列を計算し、その後でqr_decomp関数でQR分解を行っています。最後に得られたQとRの積が元の行列Aと一致することを確認しています。

6. まとめ

この記事では、Pythonを使用して行列の直交化手法である「ハウスホルダー変換」について解説しました。この手法は効率的なQR分解や固有値計算等に広く利用されます。